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 岩内ひまわり基金法律事務所の齋藤です。


 この間、事務所に電話してくれた方から「俺が被害者なのになんだ!」と怒られてしまいました。その人は、弁護士に依頼したかったのに、私が「まず、事務所に来てお話を聞かせてください。」とお伝えしたためです。確かに、お腹が減ってパン屋さんに行って「パンをください!」と言えばパンが買えます。オシャレがしたくて服屋さんに行けば服が買えます。ただ、何か難しい問題に直面して弁護士事務所に行っても、相談はできるかも知れませんが、「弁護してください!」と言ってもすぐに「はい。お任せください!」とはなりません。どうしてでしょうか?

 まず、弁護士と、パン屋さんや服屋さんとは、取り扱っているものが異なることが一番大きな理由だと思います。パン屋さんでも、服屋さんでも、扱っているものは、お客さんに提供するために、そこにあるものです。そのものは、もともと、お客さんに提供されることが予定されています。だから、お客さんが「ください!」と言えば売ってもらえます。また、成立する契約も、そのものの売買契約であり、お店にはいろいろな人が来ますが、誰に対しても同じ契約です。これに比べると、保険に入るとか、家を建てるとかいう場合には、商品が何か決まっていなかったり、契約の内容が決まっていなかったりします。弁護士も同じです。依頼のたびに契約を作ります。そこで、まずよく話を聞いて、その上で契約をすることが必要になります。

 また、弁護士の場合、弁護士法に反して契約をすることはできません。契約の前に、名前を聞いたり、事件について聞いたりすることが必要です。

 「弁護士は正義の味方じゃないのか!」と言われることもありますが、この点でも、直接会って、受けられる事件なのか確認することが必要です。「正義」というものは、ひとつではありません。困っている人は、「自分が正義だ!」と思って相談に来てくれるのだと思います。ただ、法的には、その人が正義だとは言い切れないこともあります。そのようなときは、その人から話をよく聞いて、「受けられません。」とお断りすることもあります。

 以上のように、契約をする前に、どういう契約にするか話し合う必要がありますし、受けることができる事件か確認をする必要があるので、事務所に来てもらって、よく話を聞くことが必要です。ちょっと依頼することが難しく感じるかも知れませんが、むしろ話を聞くだけで解決することもありますし、まずはご相談ください。


 岩内ひまわり基金法律事務所の齋藤です。


 人が人と生きていくことは本当に大変です。法律事務所によせられる相談は、人が人と生きていく上でのお困りごとですが、身近な人とのトラブルがよく寄せられます。家族内でのお困りごとは特に多いです。ただ、法律の原則は、「法は家庭に入らず」です。

 「法は家庭に入らず」の原則は、そもそもローマ法の格言です。国家は、家長によって構成される共同体に介入することはできないとされていました。「家は最も安全な避難所」として、社会は法が支配しますが、家庭の中は「私的領域」として慣習による自治が約束されていました。日本でも、「家制度」の下、戸主の指揮命令による家庭内での自律的解決が優先されてきました。警察など国家権力も「民事不介入」として、家庭の問題には関与しないというスタンスでした。

 しかし、私的領域であっても、法的手段が必要になることはあります。家族間であっても、暴力による支配は認められません。そのため、近年、家庭内のことであっても、公権力が対応する必要性があるとして、様々な法律が定められてきています。「家庭内暴力」、ファミリー・バイオレンス、高齢者虐待等々への対応です。平成12年に「児童虐待の防止等に関する法律」が、平成13年に「配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護に関する法律」が、平成17年に「高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律」が制定されました。

 ただ、このような家庭内の問題に対して法律が介入する状況に対し、反対する立場もあります。本来は、法律による規制に馴染まない「家庭」といった私的領域にまで法律が介入することにより、人々の生活やコミュニケーションが阻害されるとして、ハーバマスというドイツの哲学者は「法による生活世界の植民地化」としています。

 私は、法律は、社会に生きている人が生きやすくなるように、人と人との潤滑油として、社会の変化に応じて変わっていくこと、必要であれば人と人との生活にもっと介入してくるようになることも必要なのではないかと思います。ただ、法律相談で、家族内のことまで「裁判で!」と言われると、まず裁判官と話す前に家族と話し合えないかなと思ってしまいます。ただ、家族の間でも暴力を振るわれるとか、そもそも話し合いがなりたたない状況に対しては、法律があなたを守ってくれるので、ご相談ください。


  岩内ひまわり基金法律事務所の齋藤です。


 「とてもひどい目にあわされているんです。」「相手が悪いですよね?」「許せません!」という相談がよく寄せられます。お話を聞くと、“相手が悪い”ということはよくわかるのですが、それでも「何もできません」ということはよくあります。どうしてでしょう?


 第一に、法的に「相手が悪い」と言うためには、相手が「違法である」と言えなければなりません。たとえば、相手があなたを「拳で殴った」とか、「ナイフで切りつけた」とかいう場合は、刑法204条の要件「人の身体を傷害した」にあたる行為として、基本的には違法です。ただ、ボクシングで相手を拳で殴ったとか、お医者さんが手術で患部をナイフで切り取ったという場合は、違法とはされません(正当業務行為と言います。)。

 「子どもが自分の言う事を聞きません!」という相談がありますが、これは「悪い子」かも知れませんが、法的に「違法である」とは言えないので、法的には「何もできません」。お子さんと家族みんなで話し合うことをお勧めします。


 第二に、法的に「違法である」行為であなたの法的な「権利が侵害されている」ことが必要です。ここまで認められてはじめて、「何かできる」可能性が出てきます。

ここで、「何かできる」の「何を」請求するのかということが問題となってきます。1つ目は、金銭的な賠償(損害の補填)を求めることが考えられます。2つ目に、「違法である行為」をやめてもらうことが考えられます。

 1つ目の「違法である行為」による「権利の侵害」の補填は、交通事故の後の請求が一般的で、わかりやすいと思います。道路を制限速度以上で走行するとか、赤信号に突っ込むとか、「違法である行為」によって、あなたの車を壊すとか、あなたに怪我を負わせるとか、法的に保護されるべき「権利を侵害」したときは、壊した車の修理代とか、怪我の治療費とか、「損害の補填(金銭的な賠償)」を求めることができます。ただ、自分の運転ミスが原因なのに、相手の「違法な行為」で「権利を侵害」されたとして賠償を求められたら困るので、「違法な行為」によって「権利の侵害」が生じたか証明することが求められます(因果関係の証明)。

 これに対して、2つ目の「違法である行為」をやめてもらうことは、特許権や著作権は、法律で「侵害されそうなときは停止や予防を請求できる」となっていますが、それ以外の権利については、民法で明確な定めがなく、少し請求のハードルが高くなります。「違法な行為」によって「権利の侵害」が生じたとして損害の補填は認められましたが、「やめさせるほどの違法性ではない」として停止までは認めなかった判例があります(道路の騒音の事件でした。)。


 「悪いことをやめさせる」「悪い人に何か請求する」ことは、法律の世界でも基本的なことで、私も好きな事件です。ただ、基本的なことであるからこそ、本当に「悪いこと」「悪い人」であるのか、請求する人に本当に「悪いこと」で「権利の侵害」が生じたのかなど、慎重に判断することが必要になります。そのため、とても解決が難しい事件の1つです。ただ、やりがいがある事件でもあるので、これは「悪いことなのでは?」「悪い人なのでは?」という疑問が生じましたら、結局は、「悪いことの証拠がないから何もできません!」「権利の侵害が生じた証拠がないから何もできません!」となることもありますが、とりあえずご相談ください。

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